『終わった人』(内館牧子著)を読みました。定年後、雇用延長を数年してから退職し、現在は童話作家を目指されているという男性から紹介いただいた本です。
タイトルからは、なにやら重たい感じを受けますが、紹介してくださった方は何を良かったと思ったのか知りたくて、読んでみました。
主人公は大手銀行の出世コースを走り、その後子会社に出向、転籍させられそのまま63歳の定年を迎えた男性です。定年後に生き甲斐や居場所を模索する話でした。
読んでいて「この先この人はどうなる?」と気になって気になってあっという間に読んでしまいました。出来事に対して主人公の葛藤や心の声が丁寧に書かれていて、そのどの気持ちも良く分かると感じながら読めました。主人公の男性は、定年後も再びジェットコースターに乗ったような日々で、どのように落ち着くのか。定年後の一人の60代男性の日々を疑似体験できました。
物語の終わりの方で、主人公の高校時代の友人が言った言葉、「人の行きつくところは大差ねのす」は、そうであろうと思わせてくれました。
話は飛びますが、『終わった人』を読んでいる最中、私はミツバチに対する畏敬の念を頭の片隅に呼び起こしていました。女王蜂を中心に、他のミツバチは皆個ではなく全体で1つの意思となり動くと言います。また、二ホンミツバチはスズメバチ等の外敵を倒すために、自身が耐えられるギリギリまで発熱し、外敵の周りに数百匹が集まり玉となり、外敵を蒸し殺してしまうそうです。それに参加した中心部付近のミツバチは死んでしまうとも聞きます。(玉川大学、ミツバチ研究より)このように個の感じられないミツバチという生と、個の人生にこれだけ悩みもがく人間の生の、結局は同じであることを腹の底では感じていました。
そして最後に、夫婦の在り方として「卒婚」を提示してもらい、そんなスタイル・言葉があったか!と。
主人公の家族や周りの人の考え方や生き方も参考になります。会社で一旗揚げることのない専業主婦である娘の視点も辛らつですが、面白く、咲かない人の立場や考え方もチラリと感じられました。
今後の人生50代60代を生きる上で、糧になるようなキーワードをたくさんいただきました。
この本を真ん中に、身近な人と感想や意見交換をしたいです。紹介してくださった方はどこが一番響いたか、聞いてみたいです。