今年の1月に『宙わたる教室』伊与原新の小説を読みました。定時制高校に新しく科学部を作り、科学部のメンバーが火星のクレーターの再現実験を行っていくのですが、それぞれのメンバーの抱える事情や葛藤と、科学部への取り組みによる心の交流や成長が、胸を打つお話でした。

「知りたい」「やってみたい」と思えるものに出会えたこと、そこで人と出会い仲間となっていけることが、どれほど生きる力になるかを感じることができました。
こちらはNHKのドラマにもなりました。ドラマで見ても改めてあたたかな感情が胸に迫ってくるような希望を持てるお話でした。

しかし、それは特別なことではありません。私の身の回りでも感じることができます。今朝も数分でドラマを見た時と同じようなことを感じました。

私は、自然と人間を自然科学し、多言語を自然習得する実験をしているヒッポファミリークラブの活動をメンバーとして細々と楽しんでおります。メンバーはそれぞれ色々な活動をしていますが、今朝は『フーリエの冒険』(トランスナショナルカレッジオブレックス編集)をグループLINEで輪読しているところに、参加しました。私は今回初めて『フーリエの冒険』の輪読に参加したので、数式を読んでいる声を聴いていてもチンプンカンプンです。でも、いつも参加しているメンバーは、途中で「分からなくなったからもう一度」と読み直したりしていて、分かりながら読み進めていることが分かり、私はそれに衝撃を受けたりしていました。参加者は、書かれていることをどう理解しているか共有したり分かったことを話したりして、とても熱を帯びて話をしています。分かっていくことの喜びがLINEを通してもビシバシ伝わってきますし、私もいつか分かりたいという気持ちが、自然とわき上がります。

そして、いつも心の底で感嘆せざるを得ないのが、この輪読のコアメンバーのひとりが、80歳を超える女性ということです。彼女は、数式を読みながらどんどん分かっていくことを楽しんでいます。私たちをリードしてくれます。子ども達にも数式に触れさせたいといつも言ってくれています。小学生高学年には分かるように書いてあるから少しでもこういうものに触れていると、これからの可能性が広がると思うと伝えてくれます。本当にそうだと思います。興味を持って「知りたい」というモチベーションでこの本に向き合うことができたら、小学生高学年ならきっと面白いと思って分かることができるでしょう。

あとは、「知りたい」という欲求を持てるかどうか。そういう本や数式にじっくり取り組む時間を確保できるかどうか。それが問題です。現状を見ているとなかなか難しいだろうと思います。

しかしこういう時間を取れない生活をしているとうことに問題はないでしょうか。うちの娘だけでなく、近隣の小学高学年生は、皆とても忙しそうに日々を過ごしているのを見聞きしています。子どものころから時間に追われるような生活をしていて、これで心を豊かに耕すことができるのか、疑問です。

もっと、子どもの頃にもっている膨大な時間を有意義に過ごせるような環境に身をおけたら良かったのにと今更ながらに思います。

最近「コスパ」を追い求めていては幸せになれない、というような言葉をどこかで見聞きし、その通りだと感じています。せっかく生きているのですから、幸せを求めて色々と試行錯誤を楽しめるようになりたいと感じます。