まったくの門外漢ですが、コロナのワクチンはとても早く供給されるようになったなと思っていました。世の中の医療の技術ってすごいと思っていました。
しかし、私たちがコロナのワクチンを打てるようになるまでに、これほどまでの不屈の精神で続けてこられたカタリン・カリコさんの研究があったと知ることができ、改めて激しく圧倒されました。
『ブレイクスルー ノーベル賞 科学者 カタリン・カリコ自伝』カタリン・カリコ著を読みました。
カタリン・カリコさんが子どもの頃からどのように学び、考え、研究を続けてきたかがご自分の手で書かれています。
ハンガリーのご両親のもとに生まれ、簡素で小さな土の家で、家族を愛し愛されて育ち、家の仕事をあたりまえに担っていた子ども時代だったそうです。そしていつも意欲的に学ぶ姿が描かれています。生活のいたるところに科学の授業があったといいます。
「わたしが子どものころから積み重ね、やがて科学者になるための基礎となった学びのうち、いちばん重要なのがそれだ。仕事と遊びは混じりあうということ、溶けあってひとつになるということ、そして境界線という発想そのものが無意味であること」
この一文は私は本書を読まなければピンとくることはなかったと思います。しかし、とても懐かしいようなずっと昔からの言い伝えのような宝物を見せてもらったような気がしました。きっと人間が本来大切にしていたものなのでは…?と。焦がれる思いにも似たものを感じます。
学生時代のくだりでは、「わたしに特別な力があるとしたら」としてあげているのは「熱心に、系統的に努力し、けっして諦めない意思の力」と言います。「あとひとつだけ」疑問をあとひとつ、実験をあとひとつ、あとひとつだけ考えてみようと、何度も何度も、あとひとつだけを繰り返してきたというのです。この「あとひとつだけ」の継続をずっと続けてこられているようです。
また、娘のスーザンについての記載も胸に迫る部分が多くありました。とくに「応援し続けてくれる人がいる」と思ってほしいとの想い、それを娘に伝える姿もストレートでゆるぎない信念を感じます。私も想いは同じと思います。しかし、それを娘達に表現できているか?「わたしを信じてくれる人がいる。わたしにはすばらしいことができると信じて、どんなことがあっても応援し続けてくれる人がいる」と、娘達に思ってもらえているかというと、否だと思われます。
そして2020年初頭、世界中が機能を停止しました。そこからの史上最速のワクチン開発に向けての緊迫感と格闘についてそのまま伝えることは不可能と書かれていますが、その前までの障害の数々を乗り越えてきたエピソードを一緒に読ませてもらったので、それはもう私には想像だにできない読ませてもらうことさえ耐え難いような日々だったのではないかと想像できます。
これはエピローグの一部です。カタリンさんの自伝を読んだからこそ大切さを感じる言葉です。「ここでやめたとき、あるいはすこしずつハードルを下げて全力投球をしなくなったとき、失われたものはまったく気づかれることなく消え去るだろう。重要な貢献が実現せずに終わった世界は、まったくふつうの世界にみえるだろう。それが現状維持だ。」
カタリンさんが、あなたに伝えたいという言葉は「立ち止まらないで」です。「進み続けよう、成長を続けよう、光に向かって。あなたは可能性。あなたは種子。」
伝えたいです。せっかく私がこの本に出合えたので、もっと若い子たちに、中学生、高校生の未来ある子ども達に、カタリンさんのメッセージを届けたいです。