原田マハさんの本が読みたいと、たまたま手に取った『風のマジム』。頑張るって良いなぁと、しみじみと感じながら読了しました。ストーリーは那覇市の派遣社員の女性が社内ベンチャー制度に応募し、沖縄のサトウキビでラム酒の製造会社を興すお話です。

主人公のまじむや、その周りに描かれる人々もそれぞれに個性があり魅力的な人達です。道を切り開き夢を実現していく主人公のまっすぐな姿勢が清々しいです。

本作を読み終え、勇気をもらえたと思っていたら、「あとがき」にて、実在する那覇市在住の女性、金城祐子さんををモデルにしたサクセスストーリーだと紹介されていました。金城さんは、民間企業のOLから立身し、南大東島に本社を置くラム酒製造会社「グレイスラム」の代表取締役社長でいらっしゃるそうです。そして、この小説を書かれた経緯がまた興味深いものでした。なんと、原田マハさんがカルチャーライターという肩書でアートや文化に特化した記事を書いていたころ、そろそろ文章で身を立てることを視野に入れつつ、一度小説でも書いてみようかと漠然と考えていたころの出会いが始まりだそうです。2004年、原田さんは働く女性のインタビューイーとして金城さんに出会い、どこまでも前を向いて進むまっすぐなお人柄に惹かれた原田さんが、インタビュー後に「今から5年経って、金城さんのラム酒が多くの人々に飲まれ、そして私が物書きになっていたら――「沖縄産ラム酒を造った女性」の小説を書いてもいいですか?」という提案をされたのだそうです。そしてその時の約束が、こうして小説というかたちになったそうなのです。がぜん金城さんについて知りたくなりましたし、金城さんが作り出したラム「コルコル」を飲んでみたいと思いました。

そしてさらに2025年9月、伊藤沙莉さん主演にて映画公開されました。9月5日沖縄先行公開、9月12日全国公開だそうです。私が読み終わって全国公開なんて、なんというタイミングでしょう。というよりそれがあったから私の目にこの本が入ってきたのかもしれませんけれども。

映画を見て、ラムを飲んで気の置けない仲間と語るひと時を過ごす。きっとそれはすごく贅沢です。